抗議文を提出しました

 

「愛媛県は介護・看護時間の長さを「まじめ」と美徳化し、宣伝 することをやめてください。

――ふまじめな 「まじめえひめ」プロジェクトに対する抗議と中止の要望――

2019年11 月 18 日

愛媛県知事 中村時広 様

全国フェミニスト議員連盟
共同代表 小磯 妙子(神奈川県茅ヶ崎市議)
共同代表 まき けいこ(元千葉県船橋市議)
事務局 脇 礼子(神奈川県議)

愛媛県は介護・看護時間の長さを「まじめ」と美徳化 し 、 宣伝 することをやめてください。
――ふまじめな 「まじめえひめ」プロジェクトに対する抗議と中止の要望――

 私たちは女性議員を増やして、男女平等社会を実現しようと活動している市民と議員の団体です。
 愛媛県が始め た「まじめえひめ」プロジェクトの特設サイト や 「愛媛県まじめ会議」 動画 等 にあ
る、 家族介護・看護 時間 の 長さの 美徳化 および 性別役割の強化、 虚偽 データ ・ 統計解説、 性差別的
「 独身ネタ 」ハラスメント 、「県民性」 の 固定観念強化など は、 自治体が 行うべきこと ではありません 。
私たちは 本 プロジェクトに 対し 強く抗議 し、 ただちに 中止を求め ます。 (詳細は別紙)。

1.「県民の 介護・看護時間の長さ 『 全国 1 位 』 176 分) 」 を肯定的に評価し 特設サイト・ 図1) 、「ま じ め」 と
美徳化して発信するキャンペーン をただちに 中止すること

[理由]介 ・ 看護 の 実態 は様々で 、 かける 時間 は「まじめ」とは 無関係 。 介看護で 疲弊 し てい
る人、離職する人、 就職を諦める若者 も多い 。 要介護 1 2 の生活支援の給付外し ・移行化、介
護の自己負担引上 げにより、 家族介護の負担増が懸念され る 昨今、 家族 介護の美徳化は 、 女性
への心理的圧力となりうる。

2.「県民の介護・看護時間176 分 全国平均 129 分 2011 年)」 (図 2 の数字 は 誤り である 。 ただちに
訂正し、 誤った 数字を 使用した 経緯を説明 すること

[理由]出典 と された 総務省統計局・ 平成 23 年 社会生活 基本 調査 の該当 箇所 に上の数字は 存在
しない。 民間・個人サイトの無断の写しミスの疑いが 濃厚である 。

3.統計の解説文は誤りであり、ただちに訂正すること。
[理由]「愛媛は余暇時間も全国1位!その自分の時間を介護・看護など他人のために『まじめ』
に使っている、と言える」(特設サイト ・図1は、社会生活基本調において余暇に含まれてい
ない介・看護を、余暇に含めている。誤った数字・統計解説は、人を騙すことである。

4.「独身女性の多さ」をネタにした「愛媛県まじめ会議」動画は削除すること。
[理由]「クスっと笑える」動画での 「彼氏がいない独身女性 ・ 全国 1 位 」 の大げさな 取り扱い・
強調は、セクハラジョーク である (図 3 。 「 独身ネタ いじり」 は 県がやるべき こと ではない。

5.「主人」「奥さん」など非対称の男女配偶者の呼称をただちにやめること
[理由]えひめまじめ動画では撮影スタッフ自らが「(ご)主人」など、性によって対等ではない
用語を使用している(図 4 。「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」等のガイドライン
を庁内に周知徹底し、全職員に男女平等研修を頻繁に実施すべきである。

6.「県民性」の安易な使用・強調の猛省とプロジェクトの中止を求める。
[理由]出身地・居住地による集団の性格特性や行動パターン等 は、適切な目的のもと、適切な
調査・統計 を 用いて適切な分析・議論 した上で行われるべきである。 非科学的な 「県民性」の強
調 ・ 拡散は、 固定観念 ・ 人種偏見 ・ 差別 につながりかねない。


別紙:「まじめえひめプロジェクト」「まじめえひめプロジェクト」特設サイトの特設サイトの統計統計データほかデータほか詳細詳細

「県民の介護・看護時間176 分 全国平均 129 分(※ 2011 年)」という データ の出典について当連盟
の会員が 10 月 3 日に愛媛県企画振興部プロモーション戦略室 プロモーショングループに電話で問
い合わせたところ、「数字は総務省統計局の平成 23 年社会生活 基本 調査によるもので す。 わかりや
すいサイトは『都道府県別統計とランキングで見る県民性』 で 、その URL は
https://todo ran.com/t/kiji/19619 です」との返答 でした 。そこで、総務省統計局 ・平成 23 年 社
会生活 基本 調査 と、 「わかりやすいサイト」を確認したところ、以下の問題があることがわかりまし
た。

〔1 〕 県のデータの誤り の問題  「 介護・看護時間 県民・ 176 分、全国平均・ 129 分」という数字
は、総務省統計局 ・ 平成 23 年社会生活 基本 調査 を調べたところ該当する公表結果 (1) には 存在しま
せんでした。

〔2 〕 県が案内したサイトの問題 県が「わかりやすい」として紹介したサイト (以下、「民間・個
人サイト」)の URL を開くと、このサイトは一般広告も掲載されている 氏名不詳の民間・個人が運営
しているものと分かりました 。サイト運営者の連絡先メールアドレスは示されていますが、氏名不
詳すなわち責任の所在を直接に確認 できない個人サイトを県が県民・市民に案内することは問題で
す。(なお「プロフィール」欄 で の名前は「 odomon 」と示されています)。

〔3 〕民間・ 個人サイトからの流用または盗用の問題 上記の民間・個人サイト冒頭には、大きめ
の文字で「 介護・看護時間 [ 2011 年第一位 愛媛県 」とあります(図5) (2)。また、「 女性の介護・
看護時間の全国平均は 129 分。最も介護・看護時間が長いのは愛媛県で 176 分 」との記述や全国平
均 129 分を示す表もありました。県の特設サイトの 「県民・ 176 分、全国平均・ 129 分 2011 年 」

(図2)の数字 と 一致しています。 〔1〕 でみたように、これらの数字が総務省統計局・平成 23 年
社会 生活 基本 調査 の該当ページには存在しないことから、県は社会生活基本調査にあたることなく、
上記民間・個人サイトから「 2011 年第 1 位 愛媛県」、「県民 176 分、 全国平均 129 分」という 情報
を直接に流用または盗用した 疑いが濃厚です。

〔4 〕民間・ 個人サイトからの 流用(または盗用)の際の見落としまたは改ざんの問題  しかもそ
の流用(盗用) も不完全で間違っています。 民間・個人サイトでは冒頭に「 2011 年第一位 愛媛県」
と記しながらも、その下に「 ここでは 15 歳以上の男女のうち実際に介護・看護を行った人の行動時
間の平均値を比較している。また、年による変動をさけるため 2011 年と 2006 年の平均をとってい
る 」と述べており、また、その出典元を社会生活基本調査と示しています。「 県民・ 176 分、全国平
均・ 129 分」 という数字は odomon 氏が同調査から 2 年分を算出した数値であるということが分かり
ます。県は、社会生活基本調査の 5 年ごとの 2 回の結果の平均値という部分を見落とし、あるいは

改ざんして、県の特設サイトに 2011 年の調査として掲載したと考えられます。

〔5 〕 出典についてのごまかしと規約違反の問題 そのうえ県は、当連盟会員の問合せに対して、
統計データの出典を「総務省統計局・社会生活基本調査」と(詐)称して、民間・個人サイトを二
次的な位置づけにして説明しました。県が民間・個人サイトから直接データを(誤)流用・盗用し
ていたのならば、サイト運営 者への敬意に欠けるうえ、出典明示のルールに反しています。
 また総務省統計局は社会生活基本調査のデータを利用する場合は、「利用規約」として情報利用の
際の正確な出典の記載を求めています (3)。しかし県の特設サイトはその記載を怠っています。これ
も規約違反で、社会倫理に反しています。

〔6 〕 統計解説の捏造の疑いの問題 抗議文 「 3. 」で述べた通り、県は介護・看護を余暇時間で行
われているかのように説明しています。しかし、社会生活基本調査では、介護・看護時間を家族仕
事・家事と並ぶ義務的な性格の強い「2次活動」に含めています。余暇すなわち「余った暇」な時間
での行動ではありません(4)県の統計解説は何を根拠に介護・看護を余暇の時間として説明したの
か、出典も明示されていません。

〔7 〕県が紹介した民間・個人サイトのイラスト付き女性下着の広告等の問題 民間・個人サイト
には「わきのハミ肉をゴッソリ寄せる!!」などの宣伝文句のついた女性下着(ブラジャー)の イラス
ト 広告( 図6 や、 セーラー服風で、スカートがめくれた状態で太腿がむき出しに描かれている女
児のイラスト広告( 2019 年 11 月 2 日閲覧)、服が密着し露出部分の多い乳房を強調した女児のイラ
ストの広告(図7)が 掲載されていました。 これら、女児・女性が性的に強調されて描かれる広告
が掲載されるサイトを 、事前の情報 提供や 同意もなく県民・市民 に紹介 する こと はセクシュアル・
ハラスメントに当たります。

注1. 総務省統計局・平成 23 年社会生活基本調査
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index2.html#kekka(20191028 閲覧)

注2. 総務省統計局「本調査の統計データを引用・転載する場合には,出典(「平成○○年社会生活
基本調査結果」(総務省統計局))の表記をお願いします。」
http://www.stat.go.jp /data/shakai/2011/index.html( 20191028 閲覧)

注3. https://todo ran.com/t/kiji/19619( 20191028 閲覧)

注4. 平成 23 年社会生活基本調査では、「睡眠、食事など生理的に必要な活動を『1次活動』、仕事、
家事など社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動を『2次活動』、これら以外の各人が自
由に使える時間における活動を『3次活動』とし」ている。下記 5 ペー ジと別表2参照。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/pdf/kaisetua.pdf

図版

 

 

 

 

 

 

 

 

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