女性ゼロ議会訪問 埼玉県小鹿野町

 

埼玉県小鹿野町 ゼロ撲訪問

訪問自治体 :埼玉県小鹿野
訪問日時  :2024年1月26日
議会事情  :定数12人 埼玉県議会も含め64自治体中 唯一ゼロ議会
直近の選挙 :2021年10月 男性のみ立候補 無投票
訪問者   :青木延恵 内田あき子 小磯妙子 陣内泰子 三井マリ子 増田薫 山田裕子
スケジュール:市長表敬訪問、市民団体との懇談、担当職員との意見交換
要望書   :あり
報道    :埼玉新聞、赤旗日刊版 AFER120号 FEM-NEWS(三井マリ子主宰BLOG)

 1月26日、埼玉県小鹿野町を訪ねた。埼玉県唯一の「女性ゼロ議会」だ。最近の町議会議員選挙では、立候補者にすら女性はいなかった。無投票で男性候補が全員議員となった。

 木の香りでつつまれたピカピカの小鹿野町役場で町長と懇談した。町長は女性議員がいない町について「残念です」とくやしさをにじませた。そして「(男女共同参画推進のため)何か、いい方法があったら教えてほしい」と言った。しかし、町政に、男女共同参画を進める具体策はない。男女共同参画担当職員よれば、予算ゼロで、しかもたった1人の担当職員は他の多くの分野との兼任で、さまざまなアンケート調査への回答が仕事、と吐露した。その正直さに驚かされた。

 次に「みどりの村」という町民が気軽に集える場所に向かった。そこに集まってくれたママ友、子育て中の女性たちに話を聞いた。女性蔑視や男尊女卑の意識は残っているようだ。学習塾をしている染谷かおりさんは「女性は学問がなくても大丈夫、かわいければいい」という言葉を最近も耳にした、と言った。「目立ったことは嫌われ、目立たないファッションや服装になりがち。恋愛することも難しく、町の外で恋愛をしなくてならない」という深刻な事実もあがった。また学童保育は、合併する前の両神村地区は公立、小鹿野町地区は私立のままで、合併後の小鹿野町民は住む地区によってサービスが多少異なっていると、話してくれた。

 投票率は比較的高く、選挙になると「オーッ、選挙だ」と、町は盛り上がりを見せるが、女性の多くは「後ろでお茶くみ」をするのだという。
かつて2期議員をつとめた女性がいて、彼女は、子どもたちが自然と自由に遊べる空間「プレイパーク」設立の推進者だったという。その女性議員の貢献に感謝している、と町の女性たちは言った。

 1年後にまた選挙がある。人口減少も激しい小鹿野町の最重要課題は、女性が働きながら子育てしやすい環境づくりだ。それには「女性ゼロ議会」の脱出が不可避だろう。(三井記)

埼玉県小鹿野町 
町長 森 真太郎 様

2024年1月26日 

要  望  書

全国フェミニスト議員連盟は、⼥性議員を増やして男⼥平等社会を実現しようと活動する市⺠と議員の団体です。創設以来、女性候補の発掘や支援、男性議員だけが占める「女性ゼロ議会」の訪問、女性議員増に向けてのロビー活動など、運動を続けてきました。

まちづくりに女性の政治参画は欠かせません。保育、介護、健康、教育政策などに女性の視点を入れて男女ともに家庭と仕事を両立できる環境にすること、また、DVやセクハラ対策、困窮する女性ひとり親世帯の課題、防災対応への女性の視点など、女性議員の必要性は多岐にわたっています。すでに1990年、国連は、議会など指導的地位に就く女性の割合を少なくとも30%に増やすよう各国に勧告しました(注1)。さらに国連は、持続可能な開発目標SDGs17の目標のひとつに「ジェンダー平等を実現しよう」を掲げています。
しかしながら日本は、衆議院議員の女性は10.3%で、世界166位(注2)です。

2023年統一地方選挙で女性の当選率は伸び、町村議会でも女性が占める割合は15.4%と過去最高(注3)になりました。とはいえ、世界の地方議会における女性率は平均 36%(注4)であり、その差は歴然です。
埼玉県においても女性議員は増えたものの、小鹿野町は、女性候補者すらおらず、「女性ゼロ議会」です。

4年前「候補者男女均等法」が施行され、選挙の男女候補者数を均等(同数)にすることが国の目標となりました。注目すべきは、女性候補者増に向けての施策をつくって実行することは「地方自治体の責務」と明文化され、さらに地方自治体が実態調査・情報収集、啓発、環境整備、セクハラ・マタハラ対策、⼈材育成を行うことも強調されたことです。

小鹿野町議会には女性議員が過去いました。森真太郎町長による優れたリーダーシップを期待して、次のことを要望します。

  1. 2021年の選挙で立候補者に女性は皆無でした。女性が立候補できない原因・理由を調査して、なにが障害となっているかを探り、分析結果を公表して下さい。
  2. 女性議員・女性管理職割合の過去からの推移について、町民にわかりやすく図表化して広報をし、政策方針の決定過程に男女共同参画が欠かせないことの意識啓発につとめて下さい。
  3. 女性の意見が反映されるまちづくりのために、女性が公的分野に発言できる機会を新設して、女性の意見を恒常的に取り入れて下さい。
  4. 総合政策課に「男女共同参画」を推進する担当職を置いて、男女共同参画社会推進法や候補者男女均等法を順守する施策を進めて下さい。
  5. 女性団体等と連携をしながら女性のネットワークつくりの支援をして下さい。

全国フェミニスト議員連盟(共同代表 山田裕子 森本由美)
「増やせ女性議員!なくせ女性ゼロ議会」キャンペーン(青木延恵 内田あき子 小磯妙子 陣内泰子 三井マリ子 増田薫 山田裕子)

  1. 「国連ナイロビ将来戦略勧告」。30%はクリティカル・マス(存在を無視できなくなる最小人数)と称される ↩︎
  2. https://data.ipu.org/women-ranking?month=12&year=2023 ↩︎
  3. https://www.asahi.com/articles/ASR4S6G83R4SOXIE01D.html?iref=pc_rensai_long_721_article ↩︎
  4. Womens-representation-in-local-government-en.pdf(unwomen.org) ↩︎