東京都教育長に対する性教育に関する要望書

 

「子どもたちの生きる力をはぐくむための性教育をめざしてください」

5月8日
東京都教育長 中井 敬三殿

全国フェミニスト議員連盟
共同代表 ひぐちのりこ(宮城県仙台市議会議員)
共同代表 日向美砂子(東京都小平市議会議員)
事務局 小磯妙子(神奈川県茅ヶ崎市議会議員)
茅ヶ崎市鶴が台14-5-202 T/F 0467-52-6731

全国フェミニスト議員連盟は、男女平等な社会の実現をめざし、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の視点にたって、運動を続ける市民と議員の団体です。
性と生殖に関する健康は、身体的にも精神的にも自分らしく生きることができる選択を自らの意思で行えることを意味し、そのためには男女が個人として対等な立場で自己決定するための情報と手段が保障されていることが大きな前提となります。
私たちは、女性を性的対象としてのみ捉えることについて強く抗議し続けてきました。しかし、依然として誤った情報があふれ、女性の性を商品化する風潮が強い中、AV出演強要やJKビジネスに限らず、傷つき苦しむ少女や女性たちが数多くいるのが現状です。私たちは、このような女性たちと様々な形で出会い支援してきました。その中で、男女共に妊娠・避妊についての正しい知識を知らされていない現実があり、恋愛関係を誤解し対等ではない関係性(デートDV等)による性交渉や、性暴力が権利侵害だと認識できないことが、被害を拡大していると実感してきました。学校教育における、全ての子どもたちに等しく学びを伝える健康教育・人権教育としての性教育は、被害を防ぎ、子どもたちが幸せに生きる権利を保障する上でも大変重要です。
3月16日、第1回都議会定例会文教委員会における古賀俊昭都議による足立区立中学校での性教育に関する質問に対し、都は3年生を対象とした授業で中絶や避妊に触れたことは「指導要領を超え不適切」と答弁しました。しかしながら、七生養護学校裁判判決において、学習指導要領は基準であり、超える教育は明確な禁止がない限り許容されるとされたように、地域の実情に合った教育は直ちに不適切とは言えません。
4月26日、東京都教育委員会は、「中学校等における性教育への対応について」を発表し、「今後の対応」として学習指導要領を超える内容を教える場合は、保護者全員へ説明し、理解・了承を得た生徒を対象に個別指導する方法を事例にあげ、全区市町村教育委員会及び全都立高校に周知していく、としています。この事例はただでさえ多忙が課題視されている学校現場にとって現実的なやり方ではない上、男女が対等な関係性を築いていく人権教育の意味からも有効な方法とは到底考えられません。この対応事例に引きずられ、教育現場が委縮し地域や社会状況に応じた自律的な学びを損なわせるのではないかと激しい危惧を覚えます。
足立区では10代での予期せぬ妊娠や出産を防ぎ貧困の連鎖を断ち切るために、授業は地域の実情に即しているとしており、東京都内のほかの自治体でも同様な状況であることを、私たちも様々な機会を通じて知っています。子ども・若者の性をめぐる深刻な現状に目をそらすことはできません。子どもたちの学びを奪い、東京都全体の健康教育・人権教育としての性教育を大きく後退させるような事態は二度とあってはなりません。
今後も、地域の実情に即した自律的な教育を尊重し、「性の健康と権利」としての包括的性教育を豊かに保障するため、各自治体教育委員会及び学校現場の裁量を狭めたり萎縮させることのないよう強く要望するものです。

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