2006年の活動

contents

■2006.10.17 男女共同参画局と意見交換

女性の政治参加状況の新しいデータ提供など、
男女共同参画局に果たして欲しい役割はたくさんあります。
以前からの懸案だった男女共同参画局との意見交換の場を持ちます。
参加される方は前もってご連絡ください。

日  時:2006年10月26日(木) 16:30~17:30
場  所:衆議院第一議員会館 第三会議室
集合場所:衆議院第一議員会館ロビー 16時集合
内  容:
(1)女性の政治参画の状況(国会、都道府県、市町村各レベルでの女性議員、首長の動向)と世界との比較についてジェンダー統計の一分野としての情報公開
(2)国連女性差別撤廃委員会の審査について
(3)男女共同参画社会基本法・男女共同参画基本計画の推進体制について全省庁との連携方法と課題男女共同参画局の役割と可能性
(4)国民とのパートーシップについて「えがりて」ネットワークの現状説明と課題
(5)地方自治体の取り組みや地方における市民活動への支援内容と実践例について


■2006.09.05 ヌエックワークショップ

Report

ヌエックワークショップ報告

独立行政法人:国立女性教育会館(通称ヌエック)が主催し毎年夏に開いてきた「男女共同参画のための女性学・ジェンダー・交流フォーラム」は事業名称を「男女共同参画のための研究と実践の交流推進フォーラム」と変更。昨年までと大きく違う点は「女性学・ジェンダー」という文言を削除したこと、ワークショップ参加要綱の要件としてテーマを(1)女性のキャリア形成とチャレンジ支援、(2)科学技術分野への女性の参画、(3)防災と女性、(4)地域の活性化と男女共同参画、(5)環境分野への女性の参画、(6)女性関連施設・女性教育施設の役割、と限定し、ご丁寧に「裁判などの係争中の案件にかかわっていないこと」の一文が入っている。これまでのヌエックが果たしてきた全国の女性たちの自由な交流と連帯の場の提供という役割から、大きく後退したといわざるを得ない。ちなみに昨年度は「21世紀の男女平等・開発・平和 -新たな未来に向かって」の副題だけでワークショップ要件などは一切なかった。

さらに募集要項の最終確定が7月10日過ぎ、応募締め切りは7月22日(抗議を受けて8月4日に延長)というタイトな日程の中で当初はフェミ議連としての参加を危ぶむ声があったが、こういう時期にこそ私たちの参加する意義があるのではないかとのゼロ撲チームからの意見に背中を押されて参加することに決定。テーマは「社会教育・市民活動と女性の政治参加」呼びかけ文には「社会教育施設や女性関連施設を活用しての男女共同参画社会への道筋を考える」とした。当然このフォーラム参加人数も半減。会場では昨年までの活気はあまり見られなかった。

当日のワークショップ参加者は会員スタッフを含めて30人弱。3人の話題提の後、机を囲んでのグループディスカッションと全体報告、意見交換を行った。進行は今年からフェミニスト議員連盟の「なくせ女性ゼロ議会!増やせ女性議員キャンペーンチーム」のリーダーとなった神永礼子さん。

瀬野喜代代表(荒川区議)から挨拶、自己紹介を含めて荒川区の保守的な土地柄や、30人中7人の女性議員が必ずしもジェンダーの視点を持った人ばかりではないこと、来年の選挙では保育園活動の仲間から新人女性を出したかったが、男性の新人が大勢出るとのことで出馬が危ぶまれているなどが報告された。自分が議員になったことで市民活動をつなげ強化することに役立ったとの自負があるがもっともっと市民活動をする人が候補者を応援する必要があると訴えられた。

次に小磯妙子さん(横浜市フォーラム労働組合書記長)は11ページに及ぶ資料に基づいて国の基本計画に縛られる自治体の施策、社会教育施設としての公民館の変容の歴史などが報告された。国の第1次男女共同参画基本計画から5年、05年には第2次基本計画が策定されたが内容的には大きく後退している。先にあった「憲法、教育基本法にのっとり」とか「ジェンダーの視点に敏感な」という言葉が消え、ジェンダーの言葉の定義や「この言葉を適切に使うべき」という文言が入っている。当然自治体の公の施設としての女性センターの事業は、こうした計画にのっとることで実施事業が制約されることが悩ましい、と職員としての本音を話された。 また1965年の国立市立公民館の婦人教室の事業計画が示され、言葉は古いがその内容は女性が生活の中から問題意識を持ち社会を変えていく、主体を育てるという意気込みが感じられる。三多摩地域のこうした活発な公民館活動から女性が育ち、女性議員が多数進出している現在があるのではないかと指摘された。最後に女性センターで働く非正規の女性職員の劣悪な待遇と、女性の経済的自立を促すセンター事業の矛盾も考えてほしいと付け加えられた。

急遽参加できるようになった貴谷麻以さん(まつえ男女共同参画ネットワーク代表)は、人口70人の島根県、19万人の松江市と人口密集地帯とは抱える問題が違うという前置きの後、松江市内の37のあらゆる女性団体のネットワークの代表の立場から簡単な問題提起をされた。男女共同参画基本法ができて10年たっていない。ジェンダーという言葉は まだ女性学を知らない一般のひとには、使われ始めたともいえない状況であること 。ジェンダーはフランス語ではジャンルであり、すでに日本語になっている。もともとは名詞の性を表す言葉であり、2分化する形式である。セクス(性)とは言葉も概念も異なる。ジェンダーバッシングは無知からくるもので定着するにはもっと時間がかかるとの指摘をされた。さらに市の広報の市民記者として行政がいえないことを市民の立場で書くなど日ごろの実践を話された。提供された資料「行政主催の女性問題についての生涯学習講座が果たした役割―島根県の事例」では、島根県内の動きとして1998年を境にした報告、松江市の場合は95年の北京会議以後の女性たちの動きと女性センターの果たした役割が報告されている。

グループごとの話し合いでは、ワークショップのテーマの意味が参加者に伝わりきれなかったせいかグループごとの話題は多岐にわたった。中でも「女性の政治参加」という言葉がなければここには来なかった」とか、ご自分の落選経験から再挑戦を目指す人、行政情報誌の編集を担当する男性からは、行政の内容に踏み込んだ干渉を何とかしたい、などなど理解できる人に話を聞いてほしいという思いがあふれていた。最後に勝又さんから東京都の男女共同参画部局や女性の拠点施設を訪問した感想は「中央がこんなに寒々とした状況で、地方は力が出ない。もっとしっかりして」との叱咤激励が飛び出した。うーん、地方分権、男女共同参画…。まだまだ道遠し。

茅ヶ崎市議 鐘ヶ江洋子


■2006.08.10 ビルマ女性連盟主催 国際シンポジウム

ビルマ女性連盟主催 国際シンポジウム 「花咲く未来を拓くアジアの女性たち」

軍政下のビルマ(ミャンマー)では、女性と子供を含む国民が毎日将来が見えない厳しい日々を送っています。私たちビルマ女性は女性の立場から自分たちと子供たちの未来が拓く道をみなさんといっしょに考えていきたいと思います。

そして、日本を含む世界中の女性や人々に人権が保証される平和なビルマをつくるために協力を求めています。ビルマの現状やアジアの女性を巡るさまざまな問題について、話し合いましょう。

日  時:2006年8月10日(木)13:00~17:00
会  場:文京シビックホール(小ホール) 地下鉄 丸の内線・南北線 後楽園駅、都営地下鉄三田線 春日駅下
参 加 費:1,000円
内  容:

開場 13:00
第1部   13:30~16:40
シンポジウム「アジアの女性運動の現状と未来」
[ コーディネーター兼パネリスト ]
◇日本 木村民子 (文京区議会議員 全国フェミニスト議員連盟元代表)
[コーディネーター兼パネリスト ]
◇ビルマ チョチョアイ (ビルマ女性連盟日本代表)
◇韓国 孫明修(ソン・ミョンス / 大坂経済法科大学、
  アジア太平洋研究センター研究員・日韓市民スクエア共同代表)
◇日本 重川治樹 (フェリス女学院大学講師、ジャーナリスト)

★ビデオ上映
アウンサンスーチーさんのビデオメッセージ (10 分)

第2部   18:30~20:00
ビルマとの交流会 民族音楽と民族舞踊

◆主催 : ビルマ女性連盟 (日本支部)
◆協賛 : ビルマ市民フォ-ラム
◆共催 : 全国フェミニスト議員連盟
◆協力 : 文京DVを考える会、アムネスティインターナショナル、財団法人 むさしの厚生文化基金、インターナショナルフェローシップ、ビルマ民主化を目指している仲間たち
◆連絡先 : ビルマ市民フォーラム / 木村民子事務所

Report

ビルマ女性連盟主催 国際シンポジウム
「花咲く未来を拓くアジアの女性たち」

ビルマ、日本、韓国の3カ国によるシンポジウムで、テーマは「アジアの女性運動の現状と未来」。コーディネーター兼パネリストとして、木村が「日本の女性解放の歩み」と「女性の政治参画の状況」を説明した。特に女性解放運動の先駆者というべき平塚らいてうの「青鞜」と市川房枝さんの婦人参政権の獲得運動に絞って20分ほど話したあと、ビルマ女性連盟のチョチョアイさんが映像を使いながら「ビルマの民主化運動について」話し、「軍事政権下のビルマは女性と子どもが特に将来の見えない厳しい状況の中で暮らしている」と訴えた。当会会員でもある孫明修(ソン・ミョンス)さんは在日3世だが、孫さんは韓国の民主化運動に詳しく、その中で女性運動がいかに発展して来たかを映像を使って話した。ジャーナリストの重川氏は自身の父子家庭の体験から女性解放は男性解放なくてはできないということを強調し、イランのサミラ・マフマルバフ監督の映画「午後5時」に触れ、「男に政治を任せておいてはだめだ」と熱弁をふるった。韓国とビルマ両国とも時の軍事政権に抵抗し、命を削るような民主化運動と共に女性運動も進められたという厳しい状況に比べると日本の女性運動の弱さを痛感。孫さんの「韓国の女性運動はマッチョである」という名言は妙に説得力があった。

また、報道の自由がないビルマでも、韓国、日本でもこうした閉塞状況を打開するためには、真実を報道するジャーナリズムの責任は大きいということにまでディスカッションが進んだ。

休憩後は今なお軟禁状態のアウンサンスーチーさんのメッセージビデオが流され、「民主化のために一人一人が働かなければならない」スーチーさんの言葉に胸打たれた。
福島みずほ参議院議員からも「終りのない夜はない。…多くの自由、人権、民主主義を求める皆さんと心を一つにして共にがんばりましょう」という励ましのメッセージが届き、木村が読んだあとチョチョアイさんがビルマ語に訳して紹介した。


民族舞踊と民族音楽の夕べ
夜の第2部は色鮮やかな衣装をまとった民族舞踊とスーチーさんへの応援歌などの民族音楽などでにぎやかに盛り上がった


●ビルマ豆知識
●ビルマは長く英国の植民地だったが、(日本も1942年から1945年まで占領支配)1948年ビルマ連邦として独立した。だが、その後1988年から軍事政権時代に突入し、日本政府はこの軍事政権(国名をミャンマーとした)を承認している。この軍事政権下で、教育費は国の予算のわずか0.3%、小学校から中学へ進める子は約半数で、5歳以下の子どもは36%が栄養不足であり、しかも40万人の軍隊のうち7万人が子ども兵であるという事実は震撼させられる。女性への暴力とりわけ、少数民族の女性たちへの迫害は国連(CEDAW)にも報告されており、今日の活動も国連に報告するレポートの中に入れるということだ。 
●ビルマには女性の国会議員が15人いたけれど、国会は閉会状態で、ほとんどの議員が身の危険を感じて国外に逃亡 している。その中の73歳の高齢の女性議員は7年間、軍事政権に収容されていた。今はタイにいて、国外から憲法をつくる委員会(国民会議)の立ち上げを目指して活動し、国連でのロビー活動なども行っている。その憲法の草案には女性議員を30%にするクォータ制を入れたいということだ。


■2006.07.16〜23 ニュージーランド研修ツアー

女性問題省にて(フェミ議からの参加者)

日  程:7月16日(日)~23日(日)
費  用:149,000円
訪問都市:オークランド、ウェリントン、クライストチャーチ、クインズタウン

NPO G.Planningは千葉県の東葛地域を中心に真の男女共同参画社会を目指し海外研修ツアー、講演会、ワークショップ、講座等の企画実施しているNPOです。

2005年度、2006年度は、女性・子どもへの暴力防止のプログラムの日本 での公教育への導入を目指して研究会を開いています。
その一環としてのNZ研修です。研修先は、女性省、女性センター、警察(暴力防止教育のプログラム)DV被害者支援、男の性アンガープログラムを実施している団体など関連の施設などです。

Report

ニュージーランド飛びある記
女性参政権を世界で最初に獲得した国を視察

●視察日程(NPO法人Gプランニング主催、全国フェミニスト議員連盟共催)

7/17(月) オークランドオークランド女性センター
7/18(火) オークランド ノース・ハーバー・リビング・ウイズアウト・バイオレンス
シャクティ・コミュニティ・カウンシル・インク
7/19(水) ウェリントン女性問題省
ニュージーランド警察
7/20(木) ウェリントンニュージーランド女性協議会
クライストチャーチストッピング・バイオレンス・サービス
7/21(金)クライストチャーチセント・ジョセフズ・スクール
*クイーンズタウンでの女性議員との交流会は中止
7/22(土) クイーンズタウン *プレイセンター
*通訳兼コーデイネーター 江頭由紀さん(クイーンズタウン在住)

南半球のニュージーランドにこの夏、視察で訪問しました。フェミ議からは5人が参加。北島と南島をあわせて日本の2/3くらいの国をたった6日間で見てこようという欲張りな計画で、まさに飛行機で飛び歩きました。

冬のニュージーランドは天候が変わりやすく晴れたかと思うと一天にわかに曇って雨が降り出し、雹まで降るという状況で、中盤までは奇跡的に順調な視察を続けることができたのですが、クイーンズタウンに向かう飛行機がようやく離陸したものの悪天候のため着陸できず、南島の最南端のインバーカーギル空港にやむなく着陸。そこからひつじ畑とも言うべき牧場の中の道を突っ走ること2時間あまり。やっとの思いでクイーンズタウンに到着したときには、すでに午後8時をまわっていました。山道が凍結してお一人の議員は来られず、待っていてくださったもう一方には気の毒なので、残念ながら女性議員との交流会は中止となりました。

以下各参加者のレポートです。(国際担当世話人 木村民子)


ニュージーランド到着後、初めて訪れたオークランド女性センターは市街地から15分ほどの下町の住宅街にあり、芝生のある平屋の建物だった。

お話を伺ったのは、カウンセラーの資格をもつ30歳の10代教育担当のアナさん。センターはフェミニズムの考え方による女性のための団体で、具体的には「サポート活動。自主活動(ヨガや女性作家の読書会など)。週末のワークショップ。個人カウンセリング。」を行っている。民間で有料だが参加者の収入による考慮がある。スタッフは有償4名、ボランティア2名。サービスを受けた人はこれまでに1500人。30年の歴史がある。オークランド市による公設民営。

活動内容はサポート活動に力を入れていた。その中心は10代で母親になった女性たちに対するサポート。同じ経験のある女性たちがグループで話し合い情報を共有し将来についても話す。さらに、子育ての情報を具体的に学び、政府からの補助を受ける方法など実際の生活をスムーズに送ることができるような情報も学び、託児付だった。その理由はNZでは10代の妊娠が先進国の中でもかなり高く、背景には貧困、世代間連鎖などがあり、特にマオリの人たち、南太平洋からきた人々に多く見られるためだ。他にはカミングアウトした同性愛の少女たちのサポートグループなど。

あと、特筆すべき点は、Self -Defence(自己防衛)のワークショップだ。7歳~12歳のグループと13~15歳のグループ、大人のグループでそれぞれ、具体的に身を守る行動やどういう場面が危険か、さらに精神的なこと(自信のないことがおそわれる)や感情面のコントロール(危険が迫った時に怒りをおこすこと)などを教育していた。

施設内には女性の図書館もあり、その内容は女性の心と体、政治、女性に関する詩、ノンフィクションなど多岐にわたり、大変充実していた。奥には素敵な絵がかけられたカウンセリングルームがあり、小さいながらも実際的な助けになる女性センターだった。このような団体はオークランドに3団体、それ以外に全国で10~12団体あり地域に密着した団体だった。

DVに関して3つの民間団体を訪問した。DV対策は日本より10年は進んでいる。銀行などの企業がDV支援団体に多額の援助をしていること、民間団体の専従スタッフに潤沢とはいえないが生活できる給料を支払えていることは羨ましい限りです。それでも被害者を支援する際の悩みや運営の厳しさには共通するものがありました。「赤道を越えて反対側の国だけど共に頑張ろうね」と言われ、スタッフとかたくハグして別れました。

このパワーを、11月に函館で開催される全国シェルターシンポジウムに生かしたいと思う。フェミ議の皆さん、ぜひ参加してください!

(竹花郁子)


事務所訪問の前に、連携している民間シェルターを見学させてもらえた。車で20分程の郊外、5エーカーの敷地に2台所、大きなリビング、3浴室、7寝室という別荘のような2階建ての家。

心身の癒しと子どもの安全のための細かな配慮が各所になされていた。24時間電話相談、女性と子どもの保護、法律相談、教育プログラムの紹介、仕事や家探しなど自立支援を行っている。入居者は年約250人で人種にかかわらず支援する。中国、韓国、日本、アフリカの女性たちも今までに利用した。移民女性には移民としての権利も教える。通訳を雇えるだけの予算はないのでコミュニケーションが難しい場合も多い。年約2000万円の運営費は、政府から1/3を得て、銀行など各種基金や、寄付された芸術作品の展示即売など自助努力で残りを補っている。スタッフは6,7人、シェルターでは被害者が落ち着くまで寄り添ってサポートする。夫の元に戻る場合はセイフティプランを立ててから帰し、その後もスタッフが加害者と顔をあわせるこのないように外側から支援を続ける。

セイフティプランや教育プログラムは、上記の団体が行う。男性がより良く生きるためのプログラム、女性サポート、10代の加害者プログラムが用意されている。年間男性300人、女性200人、10代は50人位が研修に参加、8~16人のグループセッションで、トラウマの重い場合は一対一のセッションも行う。女性の研修は週二時間で15回、男性は6ヶ月プログラム、子どもは年齢毎のグループ研修。学校・幼稚園等への暴力防止出前講座も行っている。研修効果を尋ねたら、大学調査によると20%が劇的に変わり、65%が良い方向へ、15%は特に変化がないとの結果が出ているそうだ。20%劇的に変わるきっかけは何なのかを聞けず残念だった。


1995年に7人のアジア女性が設立した移民と難民のDV被害女性のためのサポートグループ。現在は国内にセンターを8カ所、シェルターを8カ所持っている。訪ねたセンターは5部屋あまりの民家で、まずスタッフとボランティア15人位が次々と自己紹介。インド、中国、パキスタン、イラン、バングラデシュなどの出身で、母国では37年間も教師を務めた人、ビジネスの学位をとった人、インターンシップの大学生と、様々な職業や立場や年齢の女性たちが関わっている。クライストチャーチのセンターには日本人ボランティアがいるそうだ。スタッフは例えどんな資格を持っていたとしても、必ず特別研修を受けなければならない。コミュニケーションゲーム等を行いながら違いを認めあい異文化を理解していく。多様な生活様式、宗教を背景とした人達が協力していくには重要なことだ。

もう一つ強調していたのは、アジア社会の縦関係ではなく、スタッフはみんな対等で横並びに情報を繋げていく、平場で話し合う、それぞれが代表者意識を持って役割を果たし責任転嫁をしないこと。何らかの暴力を受けたことのある人も多いのでピアサポートができる。20人が有償で関わり、運営費は年約4500万円で政府やCYF(児童相談所の様な組織)補助金や銀行などの寄付が収入源となっている。

年間約2万人の家族を支援しており、シェルター入居者は100人以上、すべてのアジア女性からの相談があり、日本女性の支援もした。パンフレットは中国語、アラビア語、韓国語併記のを揃えていた。24時間電話相談、一時保護から法的支援、文化理解や仕事を探したり、資格を取得の手助け、子どもの就学など自立に向けてのニーズを拾い上げてあらゆる支援をする。英語講座や車の運転指導も行っている。

「自分の国ではこのように充実した支援は受けられない」という被害者の言葉がきっかけで、最近マレーシア、インド、ドバイ、バングラデシュでDV調査とこの団体の活動を広めてきたという。10年間でここまでの組織を創り上げた強い意志と、手作りのお菓子でお茶の時間を準備してくれたあたたかさに、参加者はみんな感動した。


首都ウェリントンに着くと、一行13人は正装をして女性問題省に入った。トイレに行くにも、厳重な鍵をあけていく。ここだけは大変な警戒振りだった。1986年にたった30人のスタッフでできた一番小さな政府機関。女性の生き方をよりよいものに改善するための様々なアドバイスを提供する省。今回対応に当たったのは二人の女性、事務次官と、政策担当官だった。50歳前後に見える事務次官が雇用情勢とDVについて語った。

まず15歳から64歳の男女別雇用率は、男76%、女64%。働く女性の36%がパートで、働く男性の18%がパート。男女の給料格差は、女性が男性の82%。このような格差をなくすために、

1、 無償労働を分け合うこと
2、 保育所を増やし、保育者資格取得者を増やす。
3、 仕事現場をもっとフレキシブルに。
4、 パートの雇用を増やす。

ことを考えている。とのこと。有給(65%)育児休暇が自営業者にも取れるようになり、その給料は政府から出ることになった。(2006,6,1より)

次にDVに関して、政府は、経済的、社会的に大問題であると認識して、対処している。毎年殺人の50%がDVによる。そして30%の女性が何らかの影響を受けている。1995年にDV防止法ができ、加害男性への教育プログラムを実施しているが、まだ成功しているとはいえない。子どものしつけの手段としての暴力についても策を講じようとしている。

今調査を進めていること。

1、 今年がDV法の見直しの年なので、被害女性が助けを求めた道筋を集める。
2、 Keeping Ourselves Safeという虐待防止プログラムとの関係を作っていく。

最後に、女性の議会進出について聞いた。選挙制度が、小選挙区のみだったのを比例区併用に変えたのだが、93年に女性議員比率が30%だったのが、現在32%にしかなっておらず、選挙制度によって変わったとはいえないとの説明だった。しかしその後訪ねた女性協議会では、比例区併用制に変えた直後には、かなり増えたのが、その後落ちて現在に至っている、選挙制度の変革はそのときには意味を持っていたとの説であった。

女性たちは女性の活躍している政党を好むので、政党もそれに対応することになる。世界で初めて参政権を取ったという女性たちのプライドも影響している。とのことだった。


ケイト・シェパードさんたちの女性参政権を獲得する運動が実を結び、1893年にニュージーランドは世界で最初に女性参政権を獲得した。しかし、選挙権を得たものの、1923年まで被選挙権がなかったので、女性議員が誕生したのは1933年だった。ケイト・シェパードは、キリスト教禁酒同盟に属し禁酒運動をするうちに女性への暴力や女性参政権にめざめていったと聞いていたが、10ドル札の肖像を見ても、とても穏やかな素敵な女性である。

今回訪問したニュージーランド女性協議会はそのケイト・シェパードのグループが1896年に設立した。全国に31支部があり、39団体と協力関係にあり、各団体のメンバーと、ここでさまざまな議論をする。前協議会会長で今は議会監視委員会のヘリル・アンダーソンさんに話を聞いた。当協議会は、女性と子どもに関る家族の問題を中心に11ある委員会で議論したことをまとめ、政府に提言する。「107Yeras of Resolution」という分厚い冊子にはその記録が書かれており、ニュージーランド議会に提案し法律になったものがいくつかあるそうだ。たとえば加害者に対する申し立て期間が3ヶ月であったのを、1936年の法改正で12ヶ月に延長させた。

今重点的に働きかけているのは、男女の賃金格差の是正と暴力追放である。特にニュージーランドは暴力が最大の課題であり、子どもに対する取り組みはCYF (シフスDepartment of Child, Youth and Family Services)という日本の児童相談所にあたる政府の機関が行っている。協議会では、児童虐待防止などで活動している団体の代表者からの声をまとめ、政府に挙げる活動の他、 CEDAW (女子差別撤廃委員会)や子どもの権利条約委員会などにもNGOレポートを定期的に提出するため協力している。

また、女性省が女性の社会参加を進めるための 積極的改善措置を取り、2010年までに政府関係組織の女性の割合を50%にすることを目標にしているが、民間企業の女性管理職は、4%に過ぎないと聞いて、一同驚きの声が上がった。 私が、ここでは女性議員を増やすためにバックアップスクールのようなものを運営しているのかと訊ねたら、それは実施していないとのこと。ただ、選挙の時には立候補者のための教育をしたり、政党の公約の分析をして情報を流したりしているそうだ。1990年に小選挙区から比例代表併用制に変わったが、この時、女性協議会は3年間にわたり大キャンペーンを行った。小選挙区が女性にとっていかに不利か、比例代表制とは何か、どういう効果があるかを説明したパンフレットを作ったり、公聴会でスピーカーをつとめたりもしたという。そのため、1996年の比例代表併用制になった選挙では、女性立候補者が増え、1993年の女性議員は30%であったのが、2002年の選挙では37%にもなった。2005年には32%に後退したものの、女性省とは対照的に女性協議会は自分たちの活動の成果を自負しているようだった。

このニュージーランド女性協議会のように、全国の団体を束ねて政府に提言する強力な組織は日本には今のところまだない。市川房枝さんは日本のケイト・シェパードだったかもしれないが、後輩の私たちの力不足を痛感した。


1984年に、男性の怒りをコントロールする研修機関として設立したNPOで、32団体からなるDV国内ネットワークに加盟している。中心街のビル4階に事務所と研修室を設け、4つのシェルターと密接に連携をとっている。代表のポールさんは開口一番、「男性のためのプログラムにはお金が出にくく、資金繰りが厳しい」と訴えた。年間約600人の受講者の内裁判所からの250人位には国から受講料が出るが、いわゆる出来高制なので2/3がドロップアウトする現状では運営は厳しいと言う。年間約2700万円の予算で、スタッフは代表とソーシャルワーカーの常勤2人の他に、研修が開催される午後3時以降のスタッフが28名、計31名(内女性10名男性21名)。スタッフは、資質を見極める慎重な面接で採用され、年に一度16時間のトレーニングを受ける。 加害者プログラムの他に、女性支援プログラムや10代の子どもたちの怒りのコントロールプログラム(女性版・男性版)があり、1組25人で年20組実施している。個人研修も年約100人行っている。

加害者プログラムは45時間、12のセッションから成り、必ず女性と男性のスタッフ2人で実施する。女性の話を聴くことは加害男性にとって重要な研修となる。まず自分が行って来た事を話し合い、暴力に頼らずに人とコミュニケーションをとる方法を習得していく。

様々な「怒りのスケール」を用いて自分がどのような状態かを確かめる。70もの表情の顔マークが書かれた『今日はどんな風に感じてる?』表は私たちにも役立ちそうだ。 「ニュージーランドの男性は女性や子どもを大切にしてない。23年間研修を実施してきたが、なかなか変えることができないのが辛い」と代表が最後に語った。日本ではようやく加害者プログラム実施に向けて動き始めたが、この代表の言葉を噛み締めてより効果のあるものを創りたいと思った。


1878年に開校したクライストチャーチで最大のカソリック系の私立学校セント・ジョセフズ・スクールを見学させていただいた。5歳から15歳の生徒数が400人で16クラス、 最大生徒数は1年から3年で21人、4年から8年で27人と少人数学級だ。学習障害がある子どもには1人に1人の補助教員(補助教員コースを受講した有資格者)がつく。

また、98%がカトリック家庭の生徒。訪問した時、ちょうどティタイムだった。受付は高学年の生徒2人が担当し、教師たちは職員室(ミーティング・ルームのようなラフな場所)でクッキーを食べながらお茶を飲んでいた。日本と同様多くが女性教師。マーク・グレゴリー校長先生の校長室にも入れていただいた。壁に生徒たちが書いた絵をたくさん張っているのが印象的で、校長室独特の堅苦しさは感じられなかった。

学校の教育方針は、誰もがカトリック教会の教えと伝統を共有して、愛情深い環境の中で教育を提供することによって我々の子ども達に生命の準備をさせること。校舎は全て平屋で廊下は屋外だが、教室の中はつながっており暖房が効いて温かだった。この他に、図書館、コンピューター室、ホール、ラグビーとサッカーとホッケーが同時にできる自慢の広いグランドがあった。

暴力防止については学校独自のガイドラインを策定しており、すでにニュージーランド警察のプログラムを導入していた。校長先生の評価は、子ども達が告発しやすい雰囲気を作るために、教師と生徒の信頼関係が高まる効果があり、義務教育への導入の必要性を感じているとのことだった。

性教育についても1年生から実施しており、まず体の部位の正しい名前から教えているが、避妊については、やはりカトリック教会との協議があり、特に教えていない。10年間で1家族の拒否があったそうだが、まず保護者へのミーティングを行い、承諾を得てから始める。校長先生自身も2年間の性教育コースを受講して、資格を持っているとのことだった。

ちょうど、ホールで集会が行われる日で、私たちも特別に参加させていただいた。宗教的意味合いを持つ内容らしかったが、英語ができない私にはちんぷんかんぷん、子どもたちにニコニコ手を振って学校を後にした。こんなに気さくに視察を受け入れて下さったことに感謝したい。


■2006.07.08、09 全国フェミニスト議員連盟夏合宿 in 和歌山

1日目

日  時:2006年7月8日(土)12:30~17:00
会  場:田辺市 Big・U (一時保育あり)
内  容:

 12:30~13:30 開場・受付
 13:30~13:45 オープニング ミニ炭琴コンサート
 13:45~14:00 開式・挨拶  
 14:00~15:15 講演

「女性の参画が社会(まち)を変える」ほんまもんの男女平等参画と女性議員の使命 –

講師 堀内秀雄(和歌山大学生涯学習研究センター助教授)

 15:20~17:00 パネルディスカッション

  • パネリスト : 三井マリ子氏 (女性政策研究家)
  • 石崎たか代氏 (千葉県市川市議)
  • 高嶋洋子氏 (和歌山県企画部長)
  • 藤本真利子氏 (和歌山市議)
  • コーディネーター : 堀内秀雄氏

 17:00~17:30 移動(BIG・Uから白浜町三楽荘へ)
 18:00~20:30 交流会  
 21:00~ 拡大世話人会  

2日目

日  時:2006年7月9日(日)09:30~12:15
会  場:白浜町 三楽荘
内  容:

 09:30~12:15 分科会

(1)「男女共同参画と女性議員の役割」
  • 村上香代子氏 (埼玉県三郷市議)
  • 神徳佳子氏 (和歌山県環境生活部共生推進局長)
  • 進行 : 松下泰子氏 (和歌山県田辺市議)
(2)「災害と女性-防災・復興における女性の視点-」
  • 正井礼子氏(ウィメンズネット・神戸代表、カウンセラー)
  • 高月雅子氏(神奈川県茅ヶ崎市議)
  • 進行 : 片岡 玉恵 氏(ウィメンズネット・わかやま代表)
(3)「紀南の自然から環境を考える-環境行政の裏表-」
  • 玉井済夫氏(財団法人天神崎の自然を大切にする会他・和歌山大学講師)
  • 清水和子氏(和歌山県串本町議)
  • 進行 : 水上久美子氏(和歌山県白浜町議)

 11:40~12:15 全体会

◆主催 全国フェミニスト議員連盟夏合宿わかやま実行委員会
◆担当:松下 泰子さん、田井 たづ子さん、宮本 厚子さん

Report

ほんまもんの男女共同参画社会をめざして
―全国の女性議員と語り合おう―

8日は田辺市、9日は白浜町で2日間にわたって開催されました。今回の開催にあたっては田辺市議の松下泰子さんを中心に、県内の各議員、各団体が実行委員となって準備してくれました。当地に着いた私たちを歓迎の立て看板が迎えてくれ、地元の方たちの意気込みが感じられました。

代表挨拶
炭琴コンサート

オープニングは炭琴(和歌山名産の備長炭を使った琴楽器)サークルによるミニコンサートから始まりました。
澄んだ音色が会場いっぱいに広がり余韻が残る中、いよいよ開会です。白浜町の立谷町長、同議会議長、田辺市議会議長にもご参加いただきました。

堀内英雄(和歌山大学)の基調講演は「女性の参画が社会を変える」―ほんまもんの男女共同参画と女性議員の使命―をテーマに、女性議員の使命は、動員・排除を参画・共生に変えることにあり、「しなやかに、したたかに」と結びました。

堀内英雄氏基調講演
パネルディスカッション

続いてのパネルディスカッションは、同じテーマで堀内氏をコーディネーターに、三井マリ子(女性政策研究家)、石崎たかよ(市川市議)、高嶋洋子(和歌山県企画部長)、藤本眞利子(和歌山市議)をパネリストに、活発な意見交換が行われました。高嶋さんから和歌山県は女性議員が0の議会が8、1人だけが13との報告があり、県条例を武器に、議員や行政管理職に女性の参画を進めたいとの発言が印象的でした。

交流会は、チンドン座、人形劇、弁慶伝説の芝居の催し物が花を添えてくれ、白浜踊りを大勢で踊って終わりました。もちろん会場のあちらこちらで交流があったことはいうまでもありません。

弁慶伝説
2日目

2日目は (1)「男女共同参画と女性議員の役割」 (2)「災害と女性―防災・復興における女性の視点―」 (3)「紀南の自然から環境を考えるー環境行政の裏表」の3分科会があり、報告の後、来年の夏合宿での再会を約束しつつ、閉会しました。

和歌山のみなさん、ありがとうございました。

(村上香代子・文責)